若かったあの日に葬儀業界へ飛び込んでから、かれこれもう20年以上が経ちました。
それで職業柄と言いますか、心霊現象を目にすることが少なからずあります。
今回は、僕ら葬儀に携わる人間を恐怖に陥れた“幽霊たち”についての話をしようと思います。
ある晴れた、うららかな温かい春の日。
その日は葬儀の予定が無かったため、先輩である山本さんは葬儀式場の椅子に座り、いつも通り仕事をサボっていた。
するとしばらくしてから、サボっていたはずの山本先輩が突然に事務所へ駆け込んできて
「で、で、出たー‼式場に幽霊が出たー‼」
そう叫び始めた。
「はぁ?寝ぼけてるんじゃないですか?」
周りは誰も本気にしようとしない。
でも山本先輩は「絶対に幽霊がいるんだって!何人もの幽霊が式場の中で走り回ってるんだ。今すぐ式場に行ってみろ、足音が聞こえるから!」
そういって引かない。
どうやらこの山本先輩の話では、目には見えないが複数の幽霊が式場内を走り回っており、足音だけが不気味に響き渡っているそう。
しかし誰も信じなかったため、その日はそれで話は終わった。
数日後。
今度は田中先輩が、同じ式場でサボって居眠りをしていた。
すると、どこからか幽霊たちの走り回る足音が…
「あれ、これは前に山本さんが言っていた幽霊の足音か?」
そう思い、しばらくその足音に耳を澄ませていた。
するとその足音は、どうやら上の方から聞こえてくる。
不審に思った田中先輩は会館の屋上へと続く階段を昇り、会館屋上へと上がっていった。
すると、そこには衝撃的な光景が…
なんと、屋上で水鉄砲を持った子供たちが遊んでいる。
どうやら子供たちは勝手に葬儀会館の屋上に上がり込み、水鉄砲を撃ち合いながら遊んでいたようだ。
そしてその子供たちの走り回る足音を、最初の山本先輩は「幽霊が走り回っている」と思い込み、ひとりで勝手に大慌てしていたようだ…
こうして葬儀会館を騒がせた“幽霊騒動”の正体は、“水鉄砲を片手に暴れ回る、近所のやんちゃ坊主たち”であった。
山本先輩はそれ以来、式場でサボるのをやめて……と言いたいところだが、今でもちゃっかり昼寝しているらしい。
しかし今回の騒動は幽霊の仕業ではなかったわけだが、もしかするとこの世の心霊現象や怪奇現象といった類のものは、その多くが人の想像力から生まれたものかもしれない。
そう考えると、僕らは自らの想像によって、自分の人生を自分の手で振り回してしまっているのかもしれない。
そう思うのは、僕だけだろうか…
