#74『“やるべきこと”が分かっているのに動けないあなたへ—感情が理性を上回る時、人は前に進めなくなるー』 | Life Compass

#74『“やるべきこと”が分かっているのに動けないあなたへ—感情が理性を上回る時、人は前に進めなくなるー』

「やった方がいいのは分かってる。でも、体が動かない…」

そんな経験は、ありませんか?

頭では「これをやるべきだ」と理解している。
論理的に考えれば、やらない理由なんてない。
むしろ、やった方が明らかにメリットがある。

それなのに、どうしても一歩が踏み出せない。
気がつけば時間だけが過ぎていき、「また今日も何もできなかった」と自分を責める夜が来る。

もしあなたがそんな状態で、そしてもし「自分が弱いから…自分の意思が足りないから…」そうやって自分を責めているのなら、少しだけ僕の話を聞いてください。

理性で考えた「正しさ」と、感情が感じる「恐怖」。
— この2つが対立している時、人は動けなくなるのです。

 

「最初からチャレンジしなければいい」という最悪の選択

僕自身、長い間この問題に苦しんできました。

僕の家庭は、父が完璧主義でとても厳しい環境でした。
子供の頃から常に結果を求められ、失敗すれば怒られ、成功しても「なんでもっと頑張らないんだ」とダメ出しをされる。
何をやっても、どんなに頑張っても必ず怒られる。必ず責められる。

そんな環境で育った僕は、ある時こう考えるようになりました。
「どうせ認めてもらえないのなら、最初からチャレンジしなければいい」

傷つかないために、自分から可能性を閉ざす。
失敗する前に、自分で自分の道を塞ぐ。
「まぁ、やれば出来るんだけどね」と余裕ぶりながら、本当は怖くて逃げているだけ。
そんな人間に、僕は成長していきました。

大人になってから、
「やってみなければ物事は前には進まない」
「チャレンジしなければ成長できない」
と、頭で理解することはできるようになりました。

でも、感情がそれを拒否してしまう。
失敗した時の恐怖。
失敗によって自分の評価が下がってしまうという周りの目への恐れ。
これらの感情が、理性を上回ってしまう。
結果、何もできなくなる。

 

追い込まれた時、人は変われる

転機が訪れたのは、子供が生まれた時でした。

家族という大きな責任を背負った時、もう逃げることはできない。
やるしかないという状況に、僕は追い込まれました。

そんな時、ネット上で僕とは真反対の人間と出会いました。
彼は若い頃に会社を飛び出して独立起業し、成功を収め、何物にも縛られない自由な生き方をしていました。
日々チャレンジをし続け、日々進化し続けている、そんな眩しい生き方。

僕は彼に強く憧れ、彼から学び始めました。
それから、僕の人生は音を立てて動き始めたのです。

彼の専門はコミュニケーションでしたが、彼が教えてくれたのはコミュニケーションの技術だけではありませんでした。
彼の言葉の中で、特に心に残っているものがあります。

「自信というのは、その元となる根拠が無ければ生まれない。
自信を育てるためには、成功体験が必要。
だからといって、いきなり大きなことをしようとする必要は無い。
むしろ大きく失敗しないように、まずは小さく試して小さな成功体験を積む。
実は大きな成功というのは、小さな成功の集合体であり、小さな成功が積み重なって臨界点を超えた時、コップの水が溢れるかのように結果が表れ始める。」

この言葉を信じて、僕は日々の生活で小さなチャレンジを積み重ねていくことにしました。
すると、半年もたたないうちに驚くべき変化が起こったのです。

以前にもどこかで話しましたが、元々僕は対人恐怖症で、人前に立つと極度に緊張する上がり症でした。
また、酷い時には体を起き上がらせることすら出来なくなるほどの偏頭痛持ちで、なおかつ幼少期からチック症も患っていました。

それらが全て、半年足らずでほぼ完璧にコントロールできるようになってしまったのです。
そして気づけば僕は、「チャレンジしたくてウズウズしている人間」へと変わっていました。
失敗の恐怖よりも、成功した時を想像したワクワク感が上回るようになっていたのです。

 

なぜ、理性では動けないのか — システム1とシステム2

では、なぜ人は「やるべきこと」が分かっているのに動けないのでしょうか。

心理学では、人間の思考には2つのシステムがあると言われています。

「システム2」は、論理的に考え、計画を立て、合理的な判断を下す理性的な思考です。
「これをやった方がいい」「やるべきではない」と結論を出すのは、このシステムです。

一方、「システム1」は、直感的で感情的な思考です。
過去の経験から瞬時に判断を下し、危険を察知してブレーキをかけるのがこのシステムです。

問題は、システム1の方が圧倒的に強力だということです。

進化の過程で、僕ら人間は「危険を避ける」ことを最優先にプログラムされてきました。
論理的に考えて「大丈夫」と結論を出しても、感情が「危険だ」と判断すれば、体は動かない。
これは、生存本能として当然の反応なのです。

つまり、あなたが動けないのは、システム1が過去の失敗体験や恐怖の記憶から「これは危険だ」とブレーキをかけているから。

そして、ここが重要なポイントなのですが、恐怖は、論理では消えません。
いくら「大丈夫だ」「やった方がいい」と自分に言い聞かせても、感情レベルでの恐怖は消えないのです。

 

感情には、感情で対抗する

では、どうすればいいのか。

答えは、矛盾するようですが、やっぱり行動するしかないのです。
これは心理学でいう「曝露療法ばくろりょうほう」の原理と同じです。

恐怖は、避ければ避けるほど強化されます。
逆に、向き合えば向き合うほど弱まっていきます。

小さな行動を起こし、
「実際にやってみたら、思っていたほど怖くなかった」
「意外と大丈夫だった」
という経験を積み重ねることで、感情レベルで「危険ではない」と理解させていくのです。
僕のメンターが言っていた「小さな成功体験の積み重ね」というのは、まさにこのことです。

大きく失敗すると、逆に恐怖が強化されてしまいます。
だから、確実に成功できる小さな一歩から始める。
小さな成功を積み重ねることで、システム1に
「これは危険じゃない。むしろ、いいことが起こる」
と学習させていくのです。

そして、その小さな成功が臨界点を超えた時、まるでコップに注ぎ続けた水が溢れ始めるように、あなたの中で何かが変わります。
失敗の恐怖よりも、成功のワクワク感が上回る瞬間が訪れるのです。

 

行動力を上げる3つのステップ

では、具体的にどうすればいいのか。
僕の経験から、3つのステップをお伝えします。

 

ステップ1:まず、自分の恐怖を認める

最初にやるべきことは、自分が何を恐れているのかを明確にすることです。
過去の僕がそうだったように、多くの人は自分の弱さから目を背けています。
「まぁ、やれば出来るんだけど」と余裕ぶって、本当の恐怖に向き合わない。

でも敵の正体が分からなければ、戦いようがありません。
「失敗したら恥ずかしい」
「周りにどう思われるか怖い」
「自分の無能さが露呈するのが怖い」

—どんな恐怖でもいいのです。
まずは、それを認めてください。

恐怖を認めることは、弱さを認めることではありません。
むしろ、それは勇気ある第一歩です。

 

ステップ2:確実に成功できる小さな一歩を設計する

次に、絶対に失敗しないサイズ感の行動を設計します。
ここで大切なのは、「頑張れば出来る」ではなく「これなら絶対にできる」というレベルまで行動を小さくすることです。

例えば「営業で新規顧客を獲得する」が目標なら、いきなり飛び込み営業をするのではなく、「まずは既存顧客に挨拶メールを送る」から始める。

「プレゼンで堂々と話す」が目標なら、いきなり大勢の前で話すのではなく「まずは1人の同僚に自分の意見を伝える」から始める。

小さすぎて意味がないと思えるかもしれません。
でもその小さな一歩が、感情を再学習させる種になるのです。

 

ステップ3:日々の小さなチャレンジを記録する

最後に、あなたが起こした小さな行動と、その結果を記録してください。
なぜなら、人間は成功体験を忘れやすいからです。
特に自己肯定感が低い人は、小さな成功を「たまたま」「大したことない」と無意識に過小評価してしまいます。

だから、記録する。可視化する。
「今日、◯◯さんに自分から話しかけた。思ったより普通に会話できた」
「今日、会議で一言だけ発言した。誰も否定しなかった」

こうした記録が、あなたの感情を少しずつ書き換えていきます。
そして、ある日振り返った時、「こんなに変わっていたのか」と驚く瞬間が訪れるはずです。

 

「失敗の恐怖」から「成功のワクワク感」へ

僕は今、失敗することをそれほど恐れなくなりました。
それは僕が強くなったからではなく、「小さな成功体験」を積み重ねてきたからです。
システム1が学習したのです。
「チャレンジしても、死ぬわけじゃない。むしろ、いいことが起こる」と。

あなたも、同じ道を歩むことができる。
「やるべきこと」が分かっているのに動けない。
それは、あなたが弱いからではない。
ただ、感情がまだ学習していないだけです。

小さな一歩から始めてください。
確実に成功できるサイズ感で。
そしてハードルを越えたなら、無理のない範囲でそのハードルを少しずつ上げ続けていく。

その小さな成功が積み重なって臨界点を超えた時、あなたの中で何かが変わります。
失敗の恐怖よりも、成功のワクワク感が上回る日が、必ず来ます。

ー仁よりー