あなたはMENSA(メンサ)という団体を、知っていますか?
メンサというのは、1946年にイギリスで創設された、全人口の上位2%のIQ(知能指数)の持ち主でなければ入れない、いわゆる高知能の国際グループ。
それで、確かネットの番組だったと思うのですが、メンサの会員だという若い男性が二人出演しているのを以前に見たのですが、その二人が話していた内容がとても印象に残っています。
彼らは他人とコミュニケーションを図るとき、「相手によって、会話のスピードやテンポを意図的に変える」らしい。
つまり単にIQが高いだけでなく、会話する相手のレベルを見極めたうえで、自らの話し方をその都度最適化するとのこと。
■1を言えば10伝わる相手と、そうでない相手
彼らが言うには、同じメンサ会員同士で話す時は、話が異常に早いのだそう。
なぜなら、お互いIQが高いので、理解のスピードが尋常じゃない。
1を言えば、10理解してしまう。
だから「これくらいは、言わなくても分かるだろう」という前提で、説明の大部分を省略して話す。
でも、メンサ会員ではない相手と話す時は、そうはいかない。
相手のレベルや理解度を見極めながら、説明を丁寧にしたり、話す速度を落としたり、言葉を選び直したりする。
同じ人間が、相手によって、まったく違う話し方をしているわけです。
これを聞いた時、僕はふと思いました。
頭の回転が早いだけの人間は、誰が相手でも「これくらいは分かるだろう」という前提で話してしまう。
でも本当に賢い人間は、このメンサ会員たちのように、相手のレベルに合わせて対応を変えられる人なんじゃないか、と。
■「知識の呪い」という罠
心理学に、「知識の呪い」と呼ばれる現象があります。
一度、何かを深く理解してしまうと、それを知らなかった頃の自分の状態を思い出せなくなってしまう。
専門家が初心者にうまく説明できなかったり、頭のいい人ほど「これくらい常識でしょ」と、説明を省略してしまったりするのは、これが原因です。
1を言えば10理解してくれる相手とばかり話していると、その省略が「普通」になってしまう。
そしていつの間にか、それ以外の相手にも、同じペースで話してしまうようになる。
これは、地頭が良ければ良いほど、陥りやすい罠だと思います。
でも、あのメンサ会員の二人がやっていたのは、その逆でした。
相手によって、意図的に出力を切り替える。
つまり彼らは、知識の呪いを自覚し、それを自分でコントロールしていたということ。
これこそが、「知能」とは別に存在する「賢さ」の正体なんじゃないかと思います。
■学歴が高いことと、人生がうまくいくことは、別の話
また、以前にこんな話も聞いたことがあります。
世界的に大富豪と呼ばれる人たちの学歴は、実はトップクラスではなく、中の上くらいが多い、という話。
真偽のほどは分かりませんが、なんとなく納得できる話ではあります。
学歴やIQというのは、あくまで「地頭の指標」でしかありません。
人を動かし、信頼を得て、周りを巻き込んでいく力とは、また別の軸にあるものです。
頭の回転が速いだけの人は、「頭はいいのに、なんか話が通じない人」という評価をされてしまうことがよくある。
知能の高さは、それ単体では、他者との関係の中で価値を発揮しない。
相手の状態を読み取り、伝わる形に変換して初めて、知能は「賢さ」として機能するのだと思います。
■結局、人生を左右するのはコミュニケーションである
僕は長年、葬儀の仕事をしてきました。
その現場でも、まったく同じことを感じます。
同じ内容を説明するにしても、動揺している遺族に専門用語を並べ立てても伝わりません。
また、冷静に手続きを進めたいと考えている遺族に、必要以上に感情に寄り添った言い回しをしても、かえってもどかしさを感じさせてしまう。
相手が今どんな状態で、何を求めているのか?
それを読み取り、自分の話し方や言葉を、その都度調整する。
これができるかどうかで、同じ内容を話していても伝わり方はまったく違うものになります。
賢さとは、知識の量や、頭の回転の早さではない。
その知識を、目の前の相手に伝わる形に変換できる力のことだと、僕は思います。
仁より
